高輪ゲートウェイ駅 新設工事プロジェクト

高輪ゲートウェイ駅 新設工事プロジェクト

PROJECT STORY

前例のない挑戦を、
乗り越えた先に。

今回は、日本電設工業が誇るエキスパートたちが集結して挑んだ大型プロジェクトを振り返ってもらいながら、それぞれの果たした役割、プロジェクトを通して実感したやりがい、日本電設工業の魅力などを語りあってもらいました。

高輪ゲートウェイ駅

プロジェクト概要

2020年3月14日。東京・山手線の品川駅—田町駅間に約50年ぶりとなる山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」が誕生した。建築家隈研吾氏による木材をふんだんに使用した斬新な外観、照明デザイナーチームによる挑戦的な照明デザイン、そして、2019年11月16日には過去に例を見ない規模の切換工事を行うなど、高輪ゲートウェイ駅の新設工事プロジェクトは、注目度も難易度も桁違いの工事だった。

PROJECT MEMBER

  • 信号
    2006年入社 工学部  電気電子科卒
    T.T
    2006年入社
    工学部 電気電子科卒
  • 電灯電力
    2005年入社 工学部 電気電子工学科卒
    T.M
    2005年入社
    工学部 電気電子工学科卒
  • 電車線
    1995年入社 工業高校 電気科卒
    Y.S
    1995年入社
    工業高校 電気科卒
  • 通信
    2014年入社 工学部 電気工学科卒
    K.K
    2014年入社
    高等専門学校 電気工学科卒
プロジェクト始動

01プロジェクト始動

参加時の思い、それぞれの役割

このプロジェクトに関わることが決まったときの心境を教えてください。

Y.S上司から「今までのさまざまな大規模工事の経験を活かして、これまで前例のない電車線の3線同時切換を無事に終わらせてほしい」と声をかけられました。もちろん、当社としても初めての挑戦。「やってやろう」という思いと、「大丈夫だろうか」という不安な気持ちが半々でしたね。

K.K通信を担当する立場としても、今回のプロジェクトは期待と不安の入り混じったスタートでした。新駅の開設工事はそう滅多にあるものではありません。ゼロから新しいものをつくることへの期待は大きかったです。しかし同時に、今回はデザイン性の高い工事。さまざまな設備機器を設置する通信としては難しい工事になりそうだと思っていました。

T.Mとても大きなプロジェクトでしたからね。新駅の電灯電力を担当できるチャンスをもらえたことは素直にうれしかったですね。私も今までの経験を発揮するチャンスだと思いました。信号担当のT.Tさんはどうでしたか?

T.Tいや、じつは当時のことをよく覚えていなくて…。声がかかったときは隣駅の品川駅の改良工事に携わっていたのですが、どういう経緯で担当することになったかも忘れてしまって(笑)。

Y.S品川駅エリア全体の工事もまた大きなプロジェクトですからね。

それぞれの担当した役割はどのようなものだったのですか?

Y.Sまず、今回の4人の担当する現場は大きく2つに分かれます。電灯電力や通信は主に建物、新駅構内が現場です。それに対し、私たち電車線と信号は新設線路・既設線路上での施工が主でした。

T.M私たち電灯電力が高輪ゲートウェイ駅近辺の変電所から電気を引いてきます。変電所から引いてきた6600Ⅴの高電圧の電気を低電圧に変換し、電源を必要とする各部署・設備に電気を供給することが主な役割です。駅舎の建築工事の進捗に合わせ、電源のケーブルが通るルートを確保しながら進めていきます。

K.K通信も同じですね。私たちは電気ではなく、通信のルートを確保していくのですが、火災報知器やスピーカーは屋根や壁面部分に設置するため、工事の足場がある段階から建物内に入っていきます。また最終的にはカメラや電話、ネットワーク機器など、通信を必要とする機器の設置を行うのも私たちの仕事です。そして、その頃、建物の外では…

Y.Sそうですね。私たち電車線のメンバーも工事を進めていました。今回は線路自体も新設するため、新しくできた線路の上にトロリ線(電車線)を支持するための電柱・ビーム等の支持物を新設し、新しい線路上に架線を新設するための施工を進めていました。

なるほど。
建物の中と外で、いくつもの工事が同時に行われているのですね?
では、信号担当のT.Tさんは外に信号機を設置したのですか?

T.Tそれが…、今回の高輪ゲートウェイ駅には信号機は一つもないのです。まあ、山手線や京浜東北線の場合、珍しいことではないのですが。だから、今回のプロジェクトで私たち信号の担当したものといえば、ホーム上の非常停止ボタンといった保安設備の設置がメインでした。

プロジェクト中盤

02プロジェクト中盤

挑戦した壁、乗り越えた喜び

では、それぞれの工事の中で、どの部分がいちばん大変でしたか?

T.Tたとえば、先ほどの非常停止ボタン。今回の新駅は建築家のデザインへの思い入れが通常の駅と比べてかなり強かったこともあり、非常停止ボタンの設置ひとつとっても見た目の美しさが求められました。また、材料の発注などは建物が出来上がる前から行う必要があるため、常に手に図面を持ちながら完成後の姿をイメージするようにしていましたね。

T.M電灯電力で言えば、建築家のこだわりに加えて、照明デザイナーのこだわりに応える点も苦労しましたね。照明器具としての機能を満たした配置検討、JRの規格に見合った取付方法を満たすことは当然ですが、照明器具の意匠的な確認も必要になり、ときには設置場所にミリ単位の精度を求められることもありました。また、配線や配管などをお客様から見えにくい箇所に配置したいといった要望もあり、施主様、ゼネコン、建築・照明デザイナーなどの関係者と何度も打ち合わせや確認をしながら進める必要がありました。

K.Kたしかにデザイナーとの打ち合わせは毎回大変でしたね。これまで経験してきた改修工事のイメージで提案するとすべて突き返されることもあり、途中から打ち合わせ時には複数の提案を用意したり、モック(模型)などを試作して説明したりすることで徐々にお互いの意思疎通がスムーズになっていきました。

Y.S電車線の場合はデザイン面の難しさはそうありませんでしたが、約1年半という短い期間の中でさまざまな業種がそれぞれの工事を進めていかなければならず、必然的に作業が重なってしまう施工環境のなか、いかに効率的に工程を監督できるかは大きな課題でした。

T.Tしかも、これまで一度も前例のない首都圏での3線同時切換工事でしたものね。

Y.Sそうなんです。2019年11月16日・17日が切換工事でしたが、この日は電車線の関係者だけで約400名、切換工事全体では約1,500名の人間が一堂に集まり、およそ30時間という長丁場の中、この日のために各系統が準備に準備を重ねた結果を一発勝負で安全かつ正確に各自が施工を行う必要がありました。私は電車線の統括指揮者としてずっと全体を見ながらチェックしていましたが、工事がスケジュール通りに終了し、新路線・新駅に電車が入ってきたときは、喜びよりも「ほっとした」という安堵の気持ちに包まれましたね。

そのプレッシャーを想像するだけでも緊張してしまいます。
ちなみに、他の皆さんはどの瞬間にやりがいや喜びを感じましたか?

T.M建築家や照明デザイナーとのやりとりに苦労したぶん、最終的に彼らの期待に応え、「ありがとうございました」とお礼を言われたときはうれしかったですね。また、開業前にすべての電源を入れ、高輪ゲートウェイ駅に照明が灯ったときはうれしかったですね。

K.K通信の場合、開業までの間にカメラのテスト、通信ネットワークのテストなど、クリアしなければならないテストが目白押しで、むしろ、何もないことが喜びでしたね(笑)。

T.T信号もどの瞬間というより、完成に向け、徐々に喜びや達成感が増していった感じがします。

K.Kああ、でもやはり、2020年3月14日が一番印象に残っています。新駅がオープンし、改札に集まった人々が一番電車に乗って無事に駅から出発したときです。すべての苦労が実った感じがしました。その後、実家から両親が上京したときも、自分の仕事の成果を見せに連れて行きましたからね(笑)。

プロジェクト終了

03プロジェクト終了

自分自身の成長、新たな目標

改めて、このプロジェクトを通して、自分自身で成長したと思う点は?

T.M視野が広がり、視点も増えたと思います。我々の施工側の視点、施主であるJRの視点、保守の視点に加え、今回は建築家や照明デザイナーの視点、照明メーカーの視点など、さまざまな視点の存在に気づかされました。また、ホーム照明や運賃表の新技術に挑戦したり、風力発電や太陽光発電設備などの再生可能エネルギーを活用する施工にも携わったりと、本当に学ぶことが多い現場だったと思います。

T.T私も学ぶことが多かったですね。とくに、ここまでさまざまな業種のプロフェッショナルたちと同時に施工するケースはなかったので、改めて情報共有の大切さ、そのための打ち合わせや段取りの重要性を感じました。

K.K本当に、そう思います。でも、共同作業が大変だったぶん、このプロジェクトを通じて知り合った他業界、他業種の方々とは完成後も付き合いが続いていますし、自分にとっても大きな財産だと思います。

Y.Sそうですね。私の場合、今回は監理技術者として全体の工程管理や品質管理だけでなく、工事を通して部下の育成や指導も経験しました。改めて、自分一人では微力でも、組織やチームとして取り組めばどんな大規模な工事もやり遂げられると実感しました。そして、その精度を上げるためには全体を見渡し的確に指示・管理する力や、なんでも話せる風通しの良い環境づくりが重要だと感じたので、今後の業務に活かしていきたいと思います。

高輪ゲートウェイ駅

参加時の思い、それぞれの役割

最後に。皆さんの新たな目標を教えてください。

Y.S今の話の続きになりますが、私自身が担当させていただいた大規模工事の経験を、今度は若手社員に指導、教育することで、ひとりでも多くの後継者を育てることに貢献できればと思います。

T.M私も今後は管理業務に軸足を移していくため、現場の社員たちが業務をしやすくなるよう、仕組みづくりや後輩の指導にあたっていきたいですね。

K.K私自身はまだまだ担当する工事の無事故完遂が目標です。ただ、今回のプロジェクトでは他職種の先輩方に引っ張ってもらう場面が多かったため、今後は自分がプロジェクトを引っ張る側になりたいですね。

Y.S私は新駅のプロジェクト終了後、再び品川駅の改良工事の現場に戻っているのですが、この品川エリア全体のプロジェクトの完成を見てみたいですね。日本電設工業の仕事は、さまざまなプロフェッショナルと関わりながら、世の中の多くの人々の目にふれるものづくりに挑戦できる仕事。大変なことも多いですが、面白いですね。

一同(うなずく)

本日はお忙しいところ、ありがとうございました。